注文住居の購入を検討するとき、まずは何を重視しますか。おしゃれな外観やこだわった間取りの住宅なら、毎日ワクワクした気持ちで過ごせそうです。しかし、家は生活の拠点となる場所なので、デザイン以上に性能を重視するべきでしょう。ここでは住宅の基本性能について解説します。
間取りより性能が重要?関心が高まる理由とは
性能重視の傾向は近年高まっています。その理由を以下詳しくご紹介しましょう。
コロナ禍でおうち時間が増え、より過ごしやすい環境への関心が高まったから
今もなお続くコロナ禍ですが、感染拡大にともなう在宅勤務の普及が、性能重視の傾向を後押しするきっかけとなりました。とくに感染第5波にあたる2021年8月頃は、猛暑に対する光熱費の増加が大きな問題となっていましたよね。
現在エネルギー価格の上昇が続いており、今後も光熱費の負担増が予想されるので、より過ごしやすい環境への関心は高まっていくことでしょう。
世界的な脱炭素の傾向に伴い日本でも住宅の省エネが義務化されたため
世界的に脱炭素の気運が高まっている昨今、日本でも2050年カーボンニュートラルの宣言がなされるなど、同様の傾向がみられます。国内では、2021年4月から住宅建築時の建築士による省エネ性能の説明の義務化が、2022年度から若者・子育て世帯を対象に、省エネルギー住宅に最大100万円の補助金を支給する制度が導入されました。
また、2025年度からは省エネ基準への適合がすべての新築住宅で義務化される予定です。今後もさらに住宅の省エネ化への関心は高まることでしょう。
さまざまな恩恵が得られる住宅性能表示の認定が広く行われるようになったから
住宅メーカーでも、住宅の性能を重要視する流れが加速しています。住宅の基本性能については、住宅品質確保促進法(品確法)で耐震性、耐久性、省エネといった10項目が定められており、これらの項目を等級で評価したものが住宅性能評価書です。交付割合は27.8%(2020年度)と5年連続で増加しており、性能重視の風潮が読み取れます。
また、長期優良住宅の認定を謳う住宅メーカーも増えています。長期優良住宅とは、省エネ性や耐震性などが高い住宅です。長期優良住宅の認定を受けることで、住宅ローン減税やフラット35Sなど、税制・金利面でもメリットがあります。この認定件数も年間約10万戸、認定取得率は25.5%と年々増加傾向にあります。
注文住宅に必要な性能とは
注文住宅に求められる性能にはいくつかの視点がありますが、ここではとくに重要視される2点をご紹介しましょう。
耐震性
耐震性とは一言でいえば地震にどれだけ強いか、ということです。2011年に発生した東日本大震災以降、住宅の耐震性への関心が高まりました。
それまでの耐震性は震度6から7の地震発生でも家が倒壊しないことが求められていましたが、現在では、大地震が複数回発生しても重大な損傷を受けずに住み続けられるという考え方が主流になっています。
省エネルギー性
住宅の省エネ性能を高めるには、高気密、高断熱の家造りが重要になります。高気密、高断熱であるほど室内から熱が逃げにくく省エネルギー性が高まるでしょう。
省エネ性能に関しては、建築士による説明が義務化され、今後すべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化される予定であるなど、住宅の基本性能の中で今もっとも重要視されているポイントであるといえそうです。
基本性能の高い住まいを建てるメリット
ここでは基本性能の高い住まいを建てるメリットについていくつかご紹介します。
快適なだけでなく健康に暮らすことができる
断熱性の低い建物は、カビの発生やアレルギーの原因になることがあります。また、住宅内の部屋に温度差がある場合気を付けなければならないのはヒートショックです。ヒートショックは心筋梗塞や脳梗塞の原因になり、死者数はなんと年間1万7,000人にのぼります。
室内温度や湿度が快適に保たれる高性能の住宅では、このような危険性が少なく、結果して快適なだけでなく、健康に暮らせます。
光熱費の削減になる
夏の暑い時期や冬の寒い時期はどうしても冷暖房機器を使いますよね。四季があり、快適な暮らしのために1年の半分以上の時期を冷暖房に頼らなければならない日本ではとくに、機器使用によってかかる費用が家計の大きな負担になりかねません。高性能の住宅は省エネルギー性が普通の住宅より高く、光熱費の削減につながります。
住宅ローン減税や金利などの優遇
長期優良住宅や低炭素住宅なら、税制優遇やローン金利の面で優遇が受けられることになっています。具体的に2021年11月の状況によると、住宅ローンでは控除上限が年40万円から50万円に引き上げられ、フラット35Sでは当初5~10年間の金利が0.25%引き下げられるのです。
地震保険料の割引
耐震性能の高い住宅は地震保険料の割引を受けられます。耐震等級によって割引率は異なりますが、耐震等級3の住宅なら保険料が半額に割引されます。
まとめ
ここまで、住宅の基本性能についてご紹介しました。デザインや間取りと比較すると一見目立たないですが、快適な暮らしのためには性能はもっとも重要な要素です。性能を高めるために初期費用が少々高くなることもあるかもしれませんが、メンテナンス費用や過ごしやすさを長期的な目線で比較検討することをおすすめします。
代表:長岡 理知(ながおか みちとも)
■プロフィール
2005年よりプルデンシャル生命保険株式会社入社。 大手住宅メーカー専属のFPとして年間200世帯を超える資金相談会を開催。累計相談件数が3000世帯を超える。
2020年に住宅取得専門のファイナンシャルプランナーとして独立。
住宅を購入する際の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。
住宅ローンに関する多様な記事の執筆・監修も積極的に担当。